愛犬の疾患…その大半を占めるのが皮膚トラブル
愛犬が獣医にかかる疾患の大半を占めるのが、なんらかの皮膚トラブルだといいます。とくに多いのが「脂漏症」「マラセチア感染症」と呼ばれる皮膚病で、被毛の下の皮膚がベタついている、乾燥してフケが大量に出る、体臭がとてもくさくなるのが特徴です。症状が皮膚に出る場合もあれば、最初に耳の中に現れるケースもあります。
原因はマラセチア菌という皮膚の常在菌(カビの一種)が異常繁殖することです。このマラセチア菌は人間にもある常在菌で、人間の場合も体調不良やストレス、アレルギー体質であることなどが原因で異常繁殖すると、痒みを伴う症状として現れます。
人も犬も皮膚にはたくさんの常在菌がいて、そのバランスが保たれていることで、皮膚の健康を守っています。ところが、犬も人間同様にストレスや食生活の偏り、加齢、アレルギーなどによって常在菌のバランスが崩れると、症状をひきおこすのです。犬の場合、ホルモン異常や寄生虫、細菌が発症のきっかけとなることも少なくありません。
人間の場合「洗いすぎ」が原因で「皮膚の常在菌バランスの乱れ」を引き起こしているケースが少なくありません。
例えば、ニキビができたので洗顔を熱心にしたところ、かえって常在菌バランスが崩れ、ますますニキビが悪化した、ということもあります。もともと常在菌である「アクネ菌」が増えすぎたことがニキビの原因となっているのにも関わらず、洗いすぎることでさらに皮膚の常在菌バランスを乱してしまうのです。
ペットを大切に思う気持ちが
「洗いすぎ」につながることも
しかし、「脂漏症」「マラセチア感染症」の場合は、専用のシャンプー剤を使う必要があります。通常のシャンプーでは、かえって症状を悪化させてしまうこともあるのです。
何度洗ってもよくならないどころか、ひどくなっていることに気付き、獣医さんの元を訪れるケースも少なくないようです。
清潔志向によるシャンプーのしすぎが
症状の引き金になる可能性も
ご自宅でシャンプーをする場合、通常、お風呂場か洗面所で行いますね。そこで使うお湯が、脱塩素をしていない水道水そのままの場合、人間同様に「塩素による皮膚のたんぱく質除去」が行われてしまいます。シャンプーをするたびに水道水中の塩素に触れることで、皮膚の常在菌バランスが損なわれやすくなるのです。
これが、「洗っても洗ってもよくならなず、かえって症状が悪化する」という負のスパイラルとなっている可能性が考えられるのです。
水道水の塩素がペットに与える影響の研究は、あまり目にすることはありませんが、獣医師が水道水中の塩素の影響に警鐘を鳴らしたり、トリミングサロンで浄水した水をシャンプーに使用するケースは、年々増えています。
そもそも塩素はコレラ菌や赤痢菌など、水を媒介する感染症の原因菌を殺菌するために、水道水に添加されています。塩素は菌類の細胞を破壊することで、菌を無力化しているのです。
水道水が、塩素による殺菌が行われているおかげで重篤な症状を引き起こす感染症を防いでいるのは事実です。しかし、塩素は破壊する細胞を選ぶことができないため、人、動物、植物を問わず「触れたすべての細胞」に作用してしまいます。
愛犬の健康維持、そして治療のためにも
「脱塩素した水」を
しかし一方で、シャンプーの際に使う水道水中の塩素が、愛犬の健康を損なうリスクがあることも知っておく必要があります。
「脂漏症」「マラセチア感染症」にかかった場合、投薬のほかに、獣医師から処方された専用シャンプー剤で、週に1回程度シャンプーすることを治療として指示される場合があります。愛犬の皮膚が弱っているときは、健康なとき以上に塩素によるダメージを受けやすくなりますので、予防、そして治療の際にも、「脱塩素した水を日常的に使う」ことがとても大切なのです。
もちろん、人間にとっても脱塩素したお湯で入浴やシャワー、洗顔をしたほうが、健康や美容のためにもおススメです。愛犬を含めたご家族みなさんの健康のために「お水について」考えるきっかけにしていただければと思います。